2010年04月18日

移転します。

長いこと利用してまいりました本ブログですが、
以降のブログの記事は、午睡的こころの方で更新していくことにしました。

今まで拙ブログをご覧いただき、ありがとうございました。
よろしければ、移転先でもよろしくお願いいたします。
posted by garni at 01:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 呟き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月04日

「ハート・ロッカー」を観た

ハート・ロッカー 公式サイト

2010年アカデミー賞作品賞受賞作「ハート・ロッカー」を観てきました。
客席はそこそこ埋まっていて、年齢層も若い人、年配の人、さまざまでした。
率直な感想としては、なるほど娯楽的な(といっても銃撃戦だけど…)
アクションの見せ場あり、緊迫感あふれるカメラワークあり、
重厚なストーリーにサスペンス要素もあり、と、思った以上に濃い内容の作品で、
名作を鑑賞した後に感じるあのモヤモヤとした余韻に浸らせてくれる映画でした。
それは勿論、プロット自体はフィクションでありつつ、
しかし現実に今も続いている戦争を題材にしている、という部分が大きいと思います。

爆発物処理班であるブラボー部隊を密着取材して制作したかのごとく、
まるでドキュメンタリー映像でも観ているような佇まいと、そこに付随する、
人物に対して一歩引いたアングルもリアリティがあり、また音響効果が大迫力で、
例えば爆弾が爆発して飛び散る石ころとか、砂漠での銃撃戦では、
すっ飛んだ薬莢がすぐそこにまで転がってくるかのような臨場感がありました。

彼らを取り巻くイラクの人々も、誰が犯人で誰がただの民間人なのかわからない、
底知れぬ不安感が場を覆っていて、なんとなく、米軍の兵士達の側から彼らを見ると、
こういう感じなんだろうなというのが生々しく伝わってきます。

冒頭の"War is a drug"という言葉が、この映画に対して誤解を招く可能性については、
先日のネット上での宇多丸さんと町山智浩さんとのやりとりの中でもありましたが、
実際に鑑賞し終えてみると、確かにそうした要素はあったかな…と思いました。
なので劇中後半、ジェームズが帰還してからの様子を多少注意深く観てみました。

爆発物処理のプロフェッショナルとして、時に無鉄砲で、
時に自分の腕を誇示するかのような仕事ぶりをみせるジェームズが、
仲間の兵士と険悪になりながらも纏まっていく前半はとてもスピーディに感じる分、
それまでとは打って変わってどこへ進んでも失敗、焦りと虚無感に苛まれ、
それでも突き進まずにはいられない姿を描く後半は物語同様、
時間の流れまでがじわじわと重く淀んでいくようにも思えます。

任務終了の二日前、体中に爆弾を巻きつけられた
(或いは自爆テロ犯で、自分の意思で巻きつけたともとれる)
男を助けようと懸命になるジェームズだが、結局解除に間に合わず死なせてしまう。
その日の車中、穏やかな暮らしへの憧れを涙ながらに吐露するサンボーン。
しかしその言葉に対し「お前はまだ若いから大丈夫さ」と口にする、
既に妻も子供もあるジェームズには、サンボーンに共感する様子はみえない。

母国へ帰還したジェームズの日々はというと、
スーパーで妻にシリアルを買ってきて、と頼まれたはいいが、
どれを選べばいいのかわからず苛立ったり、夫婦で台所に立ち、
食事を準備する間、妻との会話で「爆発物処理班は必要なんだ」と語るも、
「これ切っておいて」とすげなく流され、冷めた表情で人参を見ていたり、
赤ん坊が目の前のビックリ箱に目を輝かせて喜んでいる姿を目にしながら、
「俺もお前くらいの頃は、大好きなものが一杯あったんだよ」
「でも今の俺にとって特別なものは1つなんだ」と語りかけたり。

エンディング…再び戦地へと降り立った彼の姿がそこにある。
Ministryによる「Khyber Pass」の激越なサウンドをバックにして、
上官と固く握手をかわすジェームズの表情は登場時の不敵な態度とは全く違い、
非情にシリアスで重く、悲壮感が漂っている。
なお、この曲の詞は下のようになってますが、劇中では歌の部分は流れません。


Where's Bin Laden
Where's Bin Laden

He's probably runnin'
Probably hidin'

Some say he's livin' at the Khyber Pass
Others say he's at the Bush's ranch

映画全体を通して押しつけがましい演出がないだけに、
戦争は麻薬、という言葉を、血に飢えた戦争中毒という風にとれてしまえなくはなく、
しかしそれは製作者の意図では決してなくて、自分を自分たらしめる本分として、
国の方策として起こした戦争そのものが悪であっても、
その中で死に最も近い場所であり、任務であってさえ、
「善き行い」を全うすることに渇望しているジェームズの心理状態こそを、
冒頭の言葉に結びつけるのが…自分の中では一番納得のできる解釈だと感じます。

ただ、もし可能なら完全版DVD等で「Khyber Pass」をフルで字幕ありで流せれば、
本作の凄みは倍加することでしょう…。

【参考】ハート・ロッカー
【参考】キャスリン・ビグロー監督が語るイラク戦争のリアル
posted by garni at 19:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画/ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。