2009年05月27日

サブカルチャー文学論の感想(2)

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サブカルチャー文学論 (朝日文庫)
大塚 英志
朝日新聞社 2007-02

by G-Tools , 2009/05/20


前回の続きです。
自分で消化しているとはどうにも思えませんが、僭越ながら再び。

今回読んでいて興味深かった部分は、
「吉本ばななと記号的な日本語による小説の可能性」です。

ここで著者は、一種の「情報空間」として提示されている、
村上春樹・高橋源一郎の作品に対し、吉本ばななの著作、
紡木たく「ホットロード」等のいくつかの少女マンガをとりあげ、
その両者の差異について意見を述べています。

現実の世界にあふれる洪水のような情報を束ねて作られた、
仮想現実化された舞台をストーリーが進む…、
そうした作品は小説・漫画に限らず、とても追いかけきれない、
凄まじい量が生み出されてきた気がします。
これが「作法」なのかというくらい…でも、今は流石に読めない。
以前は気にせず読めたけど、もう受けつけなくなってしまった。

近いうちに映画が公開される「ノルウェイの森」の本も、
正直にいうと今読み返そうと思っても何か辛い…というか、
既に限界に達している方法で書かれた作品のような気がして。
村上春樹氏自身の作風もこの頃とは様相が変わったこともあり、
どうも自分には再び手が伸ばしにくかったりします。

ところで、ずっと特別な意識もせずに吉本ばなな作品をこれまで、
僕自身もまさに「なんとなく」読んでしまってましたが、
触発されて改めて「ことば」や「小説のつくり」を意識すると、
確かに吉本ばななの本は全く異なる立ち位置で書かれていました。
著者がいうように彼女の作品は「地勢図」からも、また、
「時空間」からも離れ、現実の「情報の束」と無関係な所にいる。

歌舞伎の「世界」と「趣向」あたりの話を読むと、
例えば自分が、今の時代に「助六」を楽しむというのも、
ある意味「ファンタジー」として作品に接してるように思います。
こうしたものがあることに、ほっとできるというか…。

吉本ばなな作品はファンタジーとしてあるから、
汎世界的な普遍性があり、年代を問わずファンがいる。
どういう展開なのかは予測できるものの、何度読んでも飽きない。

とりわけ、本章以外でも引用されている、
以下の部分は非常に印象に残りました。
<「ちょっと待って、あなた、どこの国の言葉使ってる?」
わからなかったのだ。女はうなずいて、言った。
「どこの国のものでもない、あなたと、私にしか通じない言葉で話している。すべての人どうしにそういう言葉がある。本当はね。あなたと誰か、あなたと奥さん、あなたと前に一緒にいた女、あなたと父親、あなたと友達、その人たちどうしだけのためのたった一種類の言葉が。」
「二人だけじゃなかったら? どうなるんだ、その言葉っていうのは。」
「三人いたら、その場のその三人だけの言葉が、そこにひとり増えたら、また言葉は変わる。私はずっとこの街を見てきた。あなたも一人で立って、そうしてきた人。そういう人は沢山いて、私はあなたにそういう人にしか通じない『自分と東京との距離を同じくする人』の言葉で話している。でももしここに独り暮らしの優しいおばあさんが座っていたら、私はその人とは孤独についての言葉で話すでしょう。今から女を買いに行く人であれば、性欲についての言葉で。そういうものなの。」> (吉本ばなな「新婚さん」)
これは著者の考察したように、
まさに彼女の作家としての姿勢を表明しているようにとれます。
だからなのか、圧倒的な説得力で胸に迫る言葉ですね。
ロジカルな世界構築とどっちがこれからの時代に合っているかは、
また別な問題とは思いますが…。

面白いのは、彼女はさくらももこと友達というので、
何巻だったか「ちびまる子ちゃん」の単行本の中にある、
エッセイ調の漫画の中にも登場してたりしましたが、
その頃の「ちびまる子ちゃん」は「サブカルチャー色」が強く、
例えば山口百恵やドリフターズが頻繁に登場していたという点。

そして…本章で語られる宮崎勤の「ことば」について。
残忍な犯行を重ね、死刑になった男の言葉ではあっても、そこに、
今の文学の限界と照らし合わされる部分があるのは、
確かな事実なのかもしれません。

しかし、ここの部分に関しては、
「夢のなか 連続幼女殺害事件被告の告白」も読んでおかないと、
理解が深まらないところがありそうです。

今の時代、役者は揃っていても、
演じる舞台を作るのが恐ろしく難しい…という風です。
でもケータイ小説はあまりにも、極端すぎだと感じました。
文学は今後一体どうなっていくのだろうか?先が見えません。
posted by garni at 02:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 差異 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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