2009年07月06日

カッコーの巣の上で

photo
カッコーの巣の上で [DVD]
ケン・キージー
ワーナー・ホーム・ビデオ 2008-04-11

by G-Tools , 2009/07/06

管理主義の病院と自由を求めるマクマーフィの戦い、
という対立構造で単純に割り切れないのがこの映画。
患者が全てマクマーフィの味方かというと初めはそうでもないし、
病院側の人間全員がマクマーフィの敵という話でもない。

ストーリー序盤に出てくる水飲み台は、
マクマーフィがどんなに頑張ってもびくともしない。
頑強な水飲み台は病院の体制そのものともいえる、
彼のその後を考えるととてもシリアスなシーン…。

そんな彼を熱心に眺める聾唖者を装うネイティブアメリカンがいた。
その男・チーフは、マクマーフィが病院に来て、
最初に関心を持つ人間でもある。
見た目もタイプも違うが、病院に対する意識は同じ二人だ。

最初にマクマーフィがワールドシリーズ観戦を訴えた時、
グループの殆どの患者が反応しなかったことに対して、
マクマーフィは「腰抜け共」と腹を立てる。
その言葉にチーフはおそらく敏感に反応したのかもしれない。

院長が「患者の最大の理解者」とえらい評価をする、
機械のようなラチェッド婦長は、ひたすら忠実に職務にあたっている。
彼女の「民主主義の国らしく…」のくだりはかなり痛烈な皮肉。
彼女には患者と向き合おうという姿勢はどこにもない。
もしかしたら昔はあったのかもしれないが…。

再度マクマーフィがワールドシリーズを観ようと提案すると、
彼に他の患者とは違う「希望のようなもの」を感じ始めたのか、
今度はミーティングのメンバー全員が賛成の手を挙げる。
もし彼らが病院内の「秩序」に満足していたのだとしたら、
おそらく何度やっても彼らは手を挙げなかったはず…しかし、
婦長は「患者は18人いる」から多数に満たないと言い却下する。

やけくそになって、何も映っていないテレビを見据えながら、
ハイテンションで架空の実況を繰り広げるマクマーフィ。
それにつられて熱狂する患者たち…このシーンにおいても、
ラチェッドは患者が騒ごうと何しようとやはり無表情だし、
その対応にもみられる融通の利かなさこそ、
おそらくマクマーフィが最も忌み嫌うものなんだと思います。

婦長のさじ加減で病院から出られないことがわかり、
脱走の手はずを整えたマクマーフィは、
警備のおじさんを丸め込んで盛大なパーティを開く。
母親の存在に過剰なまでに萎縮していたビリーも、
マクマーフィの好意によりキャンディを抱いて「男」になると、
騒ぎの翌朝の彼の語りからは吃音が消えていて、
やっと母親という脅威を乗り越えたかに思える。
逃げそこねたマクマーフィもニヤリ。

しかし、芽生え始めた彼の自立心もまだ不完全な状態、
そこへ婦長の「あなたの母親とは親友なんですよ」という言葉が。
ビリーは再びショックを受け、吃音もリバウンドしてしまう。
絶望で自ら死を選ぶビリー…マクマーフィはかつてなく激怒する。

マクマーフィは病院のやり方に元々取り合わないこともあり、
今や婦長はビリーを追いつめ、殺した憎き存在ですらある。
怒りに任せて彼女を絞殺しようとするが、しかし未遂に終わる。
取り押さえられたマクマーフィは、グループから姿を消す。

翌日、誰かが「マックは逃げたんだ」と冗談にしていたその頃、
彼はロボトミー手術を受けさせられ、廃人になっていた。

夜、看護師たちの手により寝床に戻ったマクマーフィを見た、
事情を知らないチーフは彼へ囁く「出よう 今は俺もデカイ気分だ」
だが、マクマーフィが以前の彼でなくなっていることに気づき、
涙に身体を震わせながら、彼はマクマーフィを強く抱きしめる。
「残しては行かない こんな姿のまま…」
「一緒に行こう」
チーフはマクマーフィの顔に枕を押しつけ、窒息死させる…。

なぜチーフはマクマーフィを殺さないといけないのか。
マクマーフィと彼は生き方について意識を共有しているから、
ということなのではないかと思います。
逆の立場なら、マクマーフィがチーフを殺すのではないか。

チーフが渾身の力であの象徴的な水飲み台を引っこ抜くと、
抑えつけられていた水が勢いよく吹き上がる。
最早、まるでマクマーフィが乗り移ったかのような形相で、
ついに病院の窓をぶっ壊し、脱出するチーフ…!

そのただならぬ破壊音にテイバーはハッと目を覚まし、
そして、何が起こったかを悟り驚喜する、
その様子に他の患者も何事かと起き始めた…。

映画冒頭の風景と呼応するように、
明け方の薄暗い野原をひとり走るチーフの後ろ姿。
きっと彼はカナダへ向かったに違いない…。

重い映画ではありますが、楽しいシーンもあります。
中でも、マクマーフィがバスを乗っ取って港へ向かい、
みんなで釣りに興じる場面はとても好きです。

バスに向かって走るマクマーフィの背に向けられる、
チーフの「あいつ、やりやがったなあ」とでもいうような笑顔、
船から落っこちそうになるテイバー、
一生懸命キャンディを口説こうとするビリー、
舵を手に「ポパイ」を歌うチェズウィック、
彼と舵を奪い合うハーディング、
船室にしけ込む男女を即座に追跡するマティーニ、
そして、釣り上げた大物を誇らしげに抱えるフレドリクソン…。

マクマーフィは相当荒っぽいやり方ではあったが、
確実に病院へ大きな波紋を投げかけた。
あの病院は彼の存在を通じて、その後変わったのか、
変わらなかったのか、それはわからないけれど、
今ふたたび窓を叩き壊すチーフの姿を心に思い描くと、
自然とマクマーフィのあの台詞も同時に浮かんできます。
「でも努力したぜ チャレンジした」


【参考】カッコーの巣の上で


posted by garni at 21:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画/ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。