2009年09月04日

許されざる者

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許されざる者 [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ 2008-06-11

by G-Tools , 2009/09/04

クリント・イーストウッドが監督・製作・主演を務めた'92年の作品。
この年のアカデミー主演男優賞は『セント・オブ・ウーマン』でのアル・パチーノだったが、
本作は主役のイーストウッドに加え、ジーン・ハックマンやモーガン・フリーマン、
イングリッシュ・ボブ役の故リチャード・ハリスなど、脇役陣も豪華ベテラン揃い。
こちらも作品賞を受賞しているだけに素晴らしいけれど、
しかしなかなか一筋縄ではいかない、複雑な映画でもある。

舞台は1880年のアメリカ・ワイオミング州。
かつて極悪非道の男で知られたマニーは、亡き最愛の妻との出会いによって改心し、
今は子ども達と共に静かな豚飼いの生活を送っていたが、
昔の彼の噂を耳にしてやって来た賞金稼ぎのキッドの誘いに応じ、
元相棒のネッドを連れ、11年という自身の長いブランクに戸惑いつつも、
とある街のカウボーイの娼婦殺し(実際は顔を切られただけ)の仇討ちを引き受ける。

序盤こそ、自分に言い聞かせるように既に引退した者として、
あまり乗り気な態度でないマニーだが、他の二人のヘッポコさに業を煮やしたのか、
隠されていた冷徹な本性が徐々に立ち現れてくる。

印象的なのは、マニーが街の酒場で悪徳保安官のビルにどれだけ殴り倒され、
蹲ったところを執拗に蹴り上げられても、まるで弱々しい姿を晒すばかりだったのが、
敵のひとりであるカウボーイの腹部を撃ち抜いたあたりから目つきが変わり、
妻との約束で止めていたはずの酒もガブガブ飲み始めるという場面。

それと反比例するように、最初は威勢の良かったキッドの方が、
逆に弱々しく、人間らしい面を露わにする。
ネッドもまた、煮え切らないままに二人の元を去っていき、
彼がそれを望む、望まざるに関わらず、マニーは鬼へと変貌していく。

『グラン・トリノ』と対照的なのが、マニーがネッドを殺した保安官一味に復讐するシーン。
既に豚を飼っている地味な中年のマニーの面影は消え失せていて、
ただただ迷うことなく、倒すべき相手を冷徹に仕留めていく。
強引に『オデュッセイア』に準えれば、豚飼いのマニーは戒めに忠実な人物のそれで、
対してネッドの敵討ちに燃えているマニーはポセイドン…そんな風にもとれるかも。

彼がビルに向ける「お前こそ悪党だ」の台詞は、しかし、納得させられるものがある。
マニーを貫いているひとつの矜持は、明確な線こそ判断しづらいが、確かに存在している。
激しく雨が降りしきる夜の闇の中に、復讐を遂げたマニーが、ある意味颯爽と去っていく。
その後ろ姿を、数日前に熱にうなされていた彼を介抱した女が追う。

商売道具の顔を切られたことで、既に娼婦として働けなくなったその女の視線は、
さすがに若干の複雑さを見せてはいる。
しかし、彼の、おそらく周囲にはそれで通っているであろう、
ひたすら冷酷な姿を目の当たりにしてすら、なおそこに柔らかな表情を隠さない。
眼差しの中に、マニーの亡き妻・クローディアの心が宿っているようにも思えた。

「許されざる者」とは、誰を指しているのか、当然、マニーのことを言っているのだろう、
観る前は特に穿った見方をすることなく単純にそう思ったのだが、
鑑賞した後で改めて数々のシーンに思いを巡らせてみると、
やはりそう簡単に善悪を割り切ることはできないな、と月並みながら考えた。
鑑賞する度ごとに、また違った発見を与えてくれる名作です。


【参考】許されざる者 (1992年の映画)
posted by garni at 01:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画/ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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