2009年12月21日

「カールじいさんの空飛ぶ家」を観た

カールじいさんの空飛ぶ家 公式サイト

「Wall-E」からちょうど一年…「クリスマス・キャロル」に続き、おじいさんが主人公のアニメ映画。
まず短編「晴れときどきくもり」が上映され、それから本作へ、という流れ。
ちなみに原題は「UP」…今回は吹替版を観てきました。
こちらはカールじいさんの声を飯塚昭三さんが好演されています。

以下はネタバレ含む映画の感想。
この作品は、子供であるとかお年寄りであるとかに関わらず、
今を大切に、前を見て歩いていこうよ、と訴えているように感じました。

巨大な気球を象るほどの夥しい数の風船によって飛んでいく家に代表される、
この映画における風船の存在は、カールとエリーの二人をつなぐ、
非常に重要なアイテムになっているなあと思います。

例えば、幼いカールとエリーの出会いに絡むのも、ひとつの青い風船だし、
若かりし頃のカールが、風船いっぱいで浮かび上がりそうになっているカーゴを、
肘でしょっちゅう押さえつけてたり…その彼の傍らにはエリーがいて、
穿った見方をすれば、度々割られるボトルの貯金箱と共に、
二人が同じ夢を持って連れ添いながらも、差し当たっての現実から、
それが実現できない状況であることを暗示しているとも云える。
亡きエリーとの約束を果たすため、ヘリウムを詰めた大量の風船で浮上する二人の家。
目指すは南米にあるというパラダイスの滝…。

個性あふれるキャラクターの中でも愛らしいのは、ゴールデン・レトリーバーのダグ。
面白いのは、彼の付けた首輪による「喋り」がやたらキビキビしていたりとか、
エリザベスカラーを付けるのは犬には重い罰で、かなり恥ずかしいことだったりするところ。
にしても、ドーベルマンやブルドッグはやっぱり悪役なんだなあと。

そして、お年寄りのお手伝いバッジを求めてじいさんを訪ねる少年、ラッセル。
両親は別居なのか、離婚したのか、複雑な家庭環境にありながらも、
抜群の好奇心と行動力とでストーリーを引っ張っていく。
四角いじいさんと比較して、まるまるしているところがユニーク。

幻の鳥を探し求めて、手下に高性能バウリンガル(?)をつけた大勢の犬を従えた、
子供の頃からの憧れのヒーロー、マンツと出会うカールじいさん。
しかしマンツはかつてのマンツではなくなっていた。

カールじいさんとマンツ、この二人を対比してみると、映画は実に印象的です。
過去に囚われて豹変してしまった栄光の人物としてのマンツに対し、
カールじいさんは、冒険の夢を描きつつも現実に追われるままこの世を去った、
亡き妻エリーの「これからすること」、愛おしむようにそのアルバムのページをめくると、
カールと過ごした何気ない日々の風景で殆どが埋められていたことに気づく。
最後のページに記されていたのは妻の、自分への感謝の言葉だった。
"Thanks for the adventure - now go have a new one!
Love, Ellie"


UP: Stuff I'm Going to Do

今という時間を生きる意味がじいさんの中で変化するこの象徴的なシーンが、
不時着した家の中の家財道具一切を放り捨て、また大事にしていた夫婦の椅子をも後にして、
まさに今起こっていることを何とかするために飛んでいくあの家、という場面へとつながる。
ストーリーが進むに連れて、じいさんが体力的に若返っていく様子とも相まって、
なかなか考えさせられるところがありました。

マンツが猜疑心から手にかけた数々の冒険家の、
その崇高な精神の象徴ともいえるヘルメットとゴーグルを、
あたかも勲章のごとくコレクションしている様はアニメではあっても恐ろしく思えました。
彼が雲の中へ落下していった場面で、
ほんの申し訳程度に彼の体に引っ掛かったいくつかの風船以外、
特にフォローらしきシーンもないのは、なかなか辛辣な描写ではないでしょうか。

物語の後半、家はじいさんの元を離れますが、
雲の彼方へ消えたあの家は、それでもちゃんと約束の場所に着陸していました。
エンドロールで開かれていく、表紙に「新しい」という張り紙が付け加えられた冒険ブック。
コミカルで幻想的で社会問題も垣間見せる内容だけれど、
本作をしっかり貫くテーマが、じいさんと少年のビルドゥングスロマンという点で、
「グラン・トリノ」と少し似た部分があるようにも思います。


【参考】カールじいさんの空飛ぶ家
posted by garni at 00:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画/ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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