2008年02月25日

エクソシスト

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エクソシスト ディレクターズカット版 [DVD]
ウィリアム・ピーター・ブラッティ
ワーナー・ホーム・ビデオ 2008-07-09

by G-Tools , 2008/02/25


「エクソシスト」はホラー映画ではあるが、
ある意味では"ホラー映画"というジャンル分けに、
違和感をおぼえる部分もあるにはある。
実際はこの映画、ホラーの名を借りた内省的なドラマともいえる。
自分自身、初めて観た時から怖さをそれ程感じなかったのもあるし、
本映画のレビューをいくつか読んでみたりしても、
人間の内面を重視した作品だという意見は結構目にする。

それはやはりこの映画の主人公が、実際にはカラスだからだと思う。
「エクソシスト」は、ダミアン・カラス神父の物語なのだろう。

彼は映画の主要人物でありながら
登場からして疲れた表情なのも気になるが、
結局最後の最後までその陰りは消えることはなく、
一貫して悩めるキャラクターとして描かれている。
神父でありながら科学者であるという立場から、
霊的な存在に対して否定的な考えを持っている人物。
また、久々に帰ってきた彼の家で、
母親が聴いているラジオの言語は英語ではなかったりする。
どうやらカラスの家は移民らしい。

カラスの存在を考える上で特に印象的だったのが、
リーガンの母である女優のクリスが、
自身の出演する映画の撮影の中で、
学生に紛れて演説を行う…という場面の横を、
彼がくたびれた表情で通り過ぎていくシーン。
二人が同じ空間にいながら、この時点では接点のかけらもない。
この、華やかな世界にいる人間と鬱積したものを抱えた男の対比が、
何とも言えない侘びしさを感じさせる。
彼にとっては国がどうのとか芸能人がいるだとかなんて事より、
今まさに自身がおかれている境遇や、
信念との葛藤の方がずっと重要な問題であるということが、
淡々と描かれつつもずしりと伝わってくるカットだと思う。

そしてストーリーが進んでいくと、
その貧しさゆえに母が半ば強制的に精神病院に預けられ、
息子に裏切られたとどれほど悲しんでも何も出来ず、
最期すらも看取れなかったことへの強い後悔の念が、
ことある事にフラッシュバックして、彼を苛み続けてもいる。
対峙する悪魔リーガンにも執拗にその点を責め立てられている辺り、
彼が死を選ぶに至るところまでこの傷は影を落としている。

リーガンに憑依した悪魔はパズズらしいが、
映画の中ではその名前は出てこなかった。
悪魔は劇中、因縁の相手であるメリンの名を度々叫んでいるものの、
当のメリンは冒頭における悪魔の像を見つける場面以降は、
特に目立った所はなく、終盤でようやく悪魔と対決することになる。

exorcist_01.jpg

ここでメリンがリーガンの家にたどり着いた時の、
あのポスターにもなったシーンが出てくるのだが、
闇の中でぼんやりと光る街灯の下に立ち、
リーガンの部屋から差し込む目映い光に照らされた
メリン神父の後ろ姿は、
一瞬しか出てこないにしても非常にインパクトがあって好きな所。
監督によれば、あの構図は画家マグリットの有名な作品、
「光の帝国」をモチーフにしているらしい。

いよいよ始まった悪魔払いの儀式…。
一度は何とか悪魔を抑え込んだメリンは儀式を休憩するのだが、
先に部屋へ戻ってきたカラスは、
悪魔に母の声色で呼びかけられ取り乱してしまう。
ふらふらと寝室を出て行くカラス。

メリンが再びリーガンの枕元へやって来た後も、
ショックから立ち直れないカラスはすぐには戻れず、
憔悴したようにロビーで椅子に腰掛けたままだったりする。
それでも、クリスの「あの子は死ぬんですか…?」
との問いに目を覚ましたように顔を上げ、
「いいえ…!」決意したように再び戦いの場へ赴く。

しかし彼がリーガンの部屋へ戻ると、メリンは既に事切れていた。
拍子抜けしたような悪魔リーガンの表情を見る限り、
心臓に抱えた持病と儀式による消耗が重なって、
悪魔を追い払う前に力尽きてしまったのかもしれない。

カラスは怒り狂い、「俺に入ってみろ!」とリーガンに掴みかかる。
取り憑かれてその顔が豹変しかけた瞬間、
窓から叩き出されるようにして飛んでいったカラスは、
バーク同様、家の前の階段を転げ落ちて首の骨を折り、死んだ。
慌てて部屋に入ってきたクリスと警部が見たのはメリンの遺体と、
元に戻ったリーガンの泣きじゃくる姿だった。

数日後、親子がその忌まわしい家を離れる時がやって来た。
玄関から出てくるクリスの表情は固い。
彼女は見送りに来たダイアー神父へこう呟いた。
「何も覚えてません」
「それが良い」
まだ顔に傷跡の残る、リーガンが家から現れた。
少女は神父にキスすると、車へと乗り込んだ。

「エクソシスト」は実に壮絶で、もの悲しい作品だと思う。
ホラー映画なので明るい幕切れはないにしても、
虚無感の残る終わり方だ…でも、だからこそ重みを感じる。


【参考】エクソシスト - Wikipedia (ja)
【参考】IMDb:The Exorcist


posted by garni at 12:27 | Comment(4) | TrackBack(0) | 映画/ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私たち世代にはインパクトありすぎる
チューブラーベルズ。
思えばヴァージンレーベルはあれが原点だったなと。

高校生になったばかりのがきんちょにはただただ
鳴り物入りの馬鹿騒ぎ的な前評判ばかりが印象に残った映画でした。「失神者続出!」なんて。

実際見ると怖い印象より、引っかかるものが残る。
Posted by kiku at 2008年03月04日 21:59
>>kikuさん
Mike Oldfieldはエクソシトを観て、
「コメディー映画だと思った」
と感想を述べたとか…彼は変わり者らしい^^;
本当は音楽についても書きたかったけど、
長くなるのでまたの機会に…。

この映画は何回観ても飽きないな。
首が回ったりするシーンも嫌いではないけど、
やっぱりドラマ性に惹かれます。
Posted by garni at 2008年03月04日 22:43
あれは自分自身のなかの悪魔と対峙すること、闘う為の勇気を持つことの必要を説いていたのじゃないかとボンヤリ思ったもんだった。
宗教ってそういうもんなんじゃないかって。
Posted by kiku at 2008年03月08日 22:14
>>kikuさん
ああ…そうかもしれない。
絶対的な存在に頼りたいと思うのって、
やっぱり自分じゃ受け止めきれないものと、
どうしても闘わなきゃいけない時。

今またカラスが背負ったものの重さに共感できるのは、
自分自身のほほんと生きてるようで、
そこそこ悩んだりもがいたりしてるからなのかな。
Posted by garni at 2008年03月09日 02:29
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