「エクソシスト」はホラー映画ではあるが、
ある意味では"ホラー映画"というジャンル分けに、
違和感をおぼえる部分もあるにはある。
実際はこの映画、ホラーの名を借りた内省的なドラマともいえる。
自分自身、初めて観た時から怖さをそれ程感じなかったのもあるし、
本映画のレビューをいくつか読んでみたりしても、
人間の内面を重視した作品だという意見は結構目にする。
それはやはりこの映画の主人公が、実際にはカラスだからだと思う。
「エクソシスト」は、ダミアン・カラス神父の物語なのだろう。
彼は映画の主要人物でありながら
登場からして疲れた表情なのも気になるが、
結局最後の最後までその陰りは消えることはなく、
一貫して悩めるキャラクターとして描かれている。
神父でありながら科学者であるという立場から、
霊的な存在に対して否定的な考えを持っている人物。
また、久々に帰ってきた彼の家で、
母親が聴いているラジオの言語は英語ではなかったりする。
どうやらカラスの家は移民らしい。
カラスの存在を考える上で特に印象的だったのが、
リーガンの母である女優のクリスが、
自身の出演する映画の撮影の中で、
学生に紛れて演説を行う…という場面の横を、
彼がくたびれた表情で通り過ぎていくシーン。
二人が同じ空間にいながら、この時点では接点のかけらもない。
この、華やかな世界にいる人間と鬱積したものを抱えた男の対比が、
何とも言えない侘びしさを感じさせる。
彼にとっては国がどうのとか芸能人がいるだとかなんて事より、
今まさに自身がおかれている境遇や、
信念との葛藤の方がずっと重要な問題であるということが、
淡々と描かれつつもずしりと伝わってくるカットだと思う。
そしてストーリーが進んでいくと、
その貧しさゆえに母が半ば強制的に精神病院に預けられ、
息子に裏切られたとどれほど悲しんでも何も出来ず、
最期すらも看取れなかったことへの強い後悔の念が、
ことある事にフラッシュバックして、彼を苛み続けてもいる。
対峙する悪魔リーガンにも執拗にその点を責め立てられている辺り、
彼が死を選ぶに至るところまでこの傷は影を落としている。
リーガンに憑依した悪魔はパズズらしいが、
映画の中ではその名前は出てこなかった。
悪魔は劇中、因縁の相手であるメリンの名を度々叫んでいるものの、
当のメリンは冒頭における悪魔の像を見つける場面以降は、
特に目立った所はなく、終盤でようやく悪魔と対決することになる。
ここでメリンがリーガンの家にたどり着いた時の、
あのポスターにもなったシーンが出てくるのだが、
闇の中でぼんやりと光る街灯の下に立ち、
リーガンの部屋から差し込む目映い光に照らされた
メリン神父の後ろ姿は、
一瞬しか出てこないにしても非常にインパクトがあって好きな所。
監督によれば、あの構図は画家マグリットの有名な作品、
「光の帝国」をモチーフにしているらしい。
いよいよ始まった悪魔払いの儀式…。
一度は何とか悪魔を抑え込んだメリンは儀式を休憩するのだが、
先に部屋へ戻ってきたカラスは、
悪魔に母の声色で呼びかけられ取り乱してしまう。
ふらふらと寝室を出て行くカラス。
メリンが再びリーガンの枕元へやって来た後も、
ショックから立ち直れないカラスはすぐには戻れず、
憔悴したようにロビーで椅子に腰掛けたままだったりする。
それでも、クリスの「あの子は死ぬんですか…?」
との問いに目を覚ましたように顔を上げ、
「いいえ…!」決意したように再び戦いの場へ赴く。
しかし彼がリーガンの部屋へ戻ると、メリンは既に事切れていた。
拍子抜けしたような悪魔リーガンの表情を見る限り、
心臓に抱えた持病と儀式による消耗が重なって、
悪魔を追い払う前に力尽きてしまったのかもしれない。
カラスは怒り狂い、「俺に入ってみろ!」とリーガンに掴みかかる。
取り憑かれてその顔が豹変しかけた瞬間、
窓から叩き出されるようにして飛んでいったカラスは、
バーク同様、家の前の階段を転げ落ちて首の骨を折り、死んだ。
慌てて部屋に入ってきたクリスと警部が見たのはメリンの遺体と、
元に戻ったリーガンの泣きじゃくる姿だった。
数日後、親子がその忌まわしい家を離れる時がやって来た。
玄関から出てくるクリスの表情は固い。
彼女は見送りに来たダイアー神父へこう呟いた。
「何も覚えてません」
「それが良い」
まだ顔に傷跡の残る、リーガンが家から現れた。
少女は神父にキスすると、車へと乗り込んだ。
「エクソシスト」は実に壮絶で、もの悲しい作品だと思う。
ホラー映画なので明るい幕切れはないにしても、
虚無感の残る終わり方だ…でも、だからこそ重みを感じる。
【参考】エクソシスト - Wikipedia (ja)
【参考】IMDb:The Exorcist
2007年02月19日
Texas Chain Saw Massacre

- 悪魔のいけにえ スペシャル・エディション コンプリートBOX(3枚組)
- マリリン・バーンズ トビー・フーパー ポール・A・パーティン
- ビデオメーカー 2007-06-08
by G-Tools , 2007/02/19
「悪魔のいけにえ」が、ようやく今年の6月に再発売されるらしい。
原題は「Texas Chain Saw Massacre」…聞いた話では、
Tobe Hooper監督がこの映画を作るきっかけとなったのは、
クリスマスに混雑した街を歩いていたらムカムカしてきて、
チェーンソーを振り回したいような気分になり、
帰宅してからLou Reedの『Berlin』を聴きながら
映画のアイディアをまとめたとか、まとめないとか…
元のビデオを借りて観たのも相当前なので
自分の中で美化してる部分もあるかもしれませんが、
2003年にリメイクされた同作を最近観て、
チェーンソーの「バルルル…ブイィィィ」という音には
相変わらず恐れをなしたものの…
本家には存在したおぞましい人骨家具などがカットされていたり
一番ショッキングかつグロテスクなのが序盤のシーンで、
屋敷から逃げてきた少女が局部(?)からピストルを出して
いきなり自殺する場面だったのが少し期待外れではあった…
それだけに、久々に本家が気になっています
Texas Chainsaw Massacre Trailer
この予告編の動画を観るだけでも、
怪人・レザーフェイスが奥の扉から突然現れ襲い掛かって来たり
まともかと一瞬思ったら明らかに目つきの変な家族の様子など、
その怖さと言ったら今の感覚でもゾッとするが
それ以外にも、低予算ながらEd Geinの嗜好を再現したとされる
屋敷の異常で毒々しい雰囲気が何ともイヤ〜な感じで、
今さらながら革新的だったんだなあ…と思います
なお今回の再発に併せて3月17日から4月13日までの4週間、
シアターN渋谷にてレイトショーが放映されるようです。
興味ある方は是非!
2006年11月12日
父親たちの星条旗
父親たちの星条旗 | 硫黄島からの手紙
太平洋戦争末期に、小笠原諸島の硫黄島において
日本軍とアメリカ軍の間に生じた戦闘「硫黄島の戦い」
クリント・イーストウッド監督が、
両国双方の立場から描いた作品のうち、
まずは現在公開中の「父親たちの星条旗」を観た。
歴史の教科書などで一度は目にしたこの写真
実はこの旗は「改めて」掲げられたものだとは、
この作品を観るまでは勿論知らなかったのですが…
帰還した3名の「英雄」はそれぞれ、失った戦友への思いと
政府の思惑によって与えられた名声との間で苦悩していたが
中でもIra Hayesのその後は切なくて仕方なかった
善悪では分けられない「戦争」という悲劇を、
誠実に描いた作品だと感じました。
余談ですが、パンフに少し触れられているように
ドクの親友Ralph "Iggy" Ignatowskiは
Other eyewitness reports further indicated that Ignatowski had been tortured in the cave by the Japanese for three days, during which time they also cut out his eyes, cut off his ears, smashed in his teeth.
とのことで、彼の死がはっきりと描写されなかったのは
劇中でもショッキングだった日本兵の自決した姿以上に
痛ましい最期であったのと、それを詳細に描くことで、
イースウッド監督が本作に込めたメッセージに反する印象を
観る人が受けかねない、という配慮では…と感じました。
12月9日公開の「硫黄島からの手紙」の方も、
是非観ておきたいと思います
【参考1】John Bradley
【参考2】Rene Gagnon
【参考3】Michael Strank
【参考4】Marines in World War II Commemorative Series
太平洋戦争末期に、小笠原諸島の硫黄島において
日本軍とアメリカ軍の間に生じた戦闘「硫黄島の戦い」
クリント・イーストウッド監督が、
両国双方の立場から描いた作品のうち、
まずは現在公開中の「父親たちの星条旗」を観た。
歴史の教科書などで一度は目にしたこの写真
実はこの旗は「改めて」掲げられたものだとは、
この作品を観るまでは勿論知らなかったのですが…
帰還した3名の「英雄」はそれぞれ、失った戦友への思いと
政府の思惑によって与えられた名声との間で苦悩していたが
中でもIra Hayesのその後は切なくて仕方なかった
善悪では分けられない「戦争」という悲劇を、
誠実に描いた作品だと感じました。
余談ですが、パンフに少し触れられているように
ドクの親友Ralph "Iggy" Ignatowskiは
Other eyewitness reports further indicated that Ignatowski had been tortured in the cave by the Japanese for three days, during which time they also cut out his eyes, cut off his ears, smashed in his teeth.
とのことで、彼の死がはっきりと描写されなかったのは
劇中でもショッキングだった日本兵の自決した姿以上に
痛ましい最期であったのと、それを詳細に描くことで、
イースウッド監督が本作に込めたメッセージに反する印象を
観る人が受けかねない、という配慮では…と感じました。
12月9日公開の「硫黄島からの手紙」の方も、
是非観ておきたいと思います
【参考1】John Bradley
【参考2】Rene Gagnon
【参考3】Michael Strank
【参考4】Marines in World War II Commemorative Series






